平成17年度

研 究 紀 要
奈良県立教育研究所指導主事

研 究 集 録
奈良県立教育研究所長期研修員
奈良県立教育研究所指定研究員

第13号


はじめに



研 究 紀 要

研究の概要
1 これからの学校評価の在り方

学校経営係長 梅 野 満 雄
 各学校は学校評価を導入した段階であり、学校評価が形式的なものに終っていたり、学校改善にうまく結び付いていなかったりする現状がみられる。
 これからは、保護者や地域住民等には単に学校を支援する“サポーター”から、学校運営に参画する“パートナー”になっていただくために、「内固め」の学校評価から「外攻め」の学校評価へと移行しなければならない。
2 小学校におけるコーチング活用の可能性

指導主事 春 名 久 雄
 コーチングは、スキルである前に「人間観」であると言われる。相手の能力や可能性を信じ、考えや行動に共感し、共に向上する方向を目指す考え方は、人間形成の土台を育成する役割を担う小学校教師には、とりわけ必要不可欠な教育スキルとなる。児童支援の在り方をコーチングの側面から考え、教育現場における実践的な活用の方途を探った。
3 学校危機管理
 −学校保健の立場から考える−
指導主事 清 水 俊 也
 学校は本来安全なところでなければならない。ところが残念なことに安全であるべき学校内やその登下校中に、児童生徒が犠牲になる事件や事故が多発している。児童生徒や教職員の安全を確保するために、危機とは何か、どのような危機の発生が予測されるのか、危機への対応等を含め危機を未然に防ぎ、被害を最小限にくい止め、克服するためにどうすればよいのかを学校保健の立場から考える。
4 学校事務職員の資質向上
 −研修プログラムの工夫−
主  査 西 田 邦 子
 学校運営の重要な一翼を担っている学校事務職員としての重要性を認識し、教育行政の専門家として学校経営に主体的にかかわるためには、学校事務職員の資質の向上、能力の開発が必要になる。そこで、学校全体を見渡せる視野をもち、他の教職員とのコミュニケーションを図り、学校運営に参画していく力に注目し、その向上に向けた研修プログラムの工夫・改善を行った。
5 「読むこと」の指導についての一考察
 −小学校における指導を中心に−
指導主事 岸 本 憲一良
 国語科の3領域のうちの一つ、「読むこと」の指導の在り方について考察を加えた。小学校学習指導要領に示された「読むこと」の目標及び内容について吟味するとともに、文学的文章及び説明的文章のそれぞれの読みにおいて留意すべき事項について明らかにし、小学校で学習の中心に据えるべき音読についても考察を加えた。
6 子どもにとって「ノート」とは何か
 −「ノートを写す」「ノートをとる」ことの意味−
学習指導係長 森 本   理
 子どもの学習意欲を引き出し、見えないものを見えるようにする授業が求められている。「教え、分からせ、理解させる授業」から「意欲をもって考える授業」への転換である。しかし、子どもの意欲も「できないけどしてみる」から「できるけどしない」まで多様である。確かな学力を高める方途について、授業におけるノートの活用とその指導の在り方から考察する。
7 授業ビデオによる授業分析及び授業改善に関する研究

指導主事 吉 田 勝 哉
 優れた授業とはどのような授業か。教師が自らの授業を改善するにはどうすればよいか。授業をビデオで録画し、その授業ビデオを基にして授業の構想力や指導力の分析を行った。この授業ビデオ分析の実践を通して、授業ビデオによる授業研究の方法を確立するとともに、優れた授業の特性について追究した。
8 中・高等学校理科におけるシラバスの在り方
−生徒が学習に活用でき、教員が授業の工夫改善に生かせるシラバスの作成−
指導主事 江 藤 芳 彰
 現状の中・高等学校のシラバスは、教育課程にかかわる説明責任を果たすために作成されたものが多い。本研究では、高等学校理科「生物T」において、生徒が学習に活用でき、教員が授業の工夫改善に生かせるシラバスを作成した。その作成を通し、シラバスが生徒の学習への主体的な取組を向上させ、確かな学力を高め、教員の授業の質を向上させるものであることが明らかになった。
9 「生きる力」を育てる音楽教育

指導主事 樋 口 博 史
 人間が生きて行くには、いろいろな力を要する。かつて「読み・書き・そろばん」が学問の代名詞とされた時代があったが、それ以後、人間が生きていく上で必要とされる力について、いろいろ模索されてきた。知識偏重の時期を経て、21世紀は「心の時代」と言われ、心を豊かにする教育について考察されている。我々は今、生きる上で「豊かな心」の必要性を感じている。音楽教育の中で「豊かな心」をはぐくみ、「生きる力」を育てるにはどうすればよいのか考察する。
10 これからの鑑賞教育の在り方
 −全国的な調査や研修講座から探る―
指導主事 島 崎   裕
 小学校図画工作科、中学校美術科、高等学校芸術科(美術、工芸)の内容は「表現」と「鑑賞」から成り立っている。図画工作や美術に関する諸能力は、これら二つの学習がバランスよく総合的に取り組まれることによって高まる。しかし、学校では様々な理由から「鑑賞」の内容が後回しにされてい る状況がある。そこで、その要因を究明し、これからの望ましい鑑賞の在り方を探る。
11 小学校家庭科における食に関する指導
  
指導主事 竹 川 春 美
 社会環境が大きく変化し、食生活の多様化が進む中、食生活の乱れが問題となっている。このような状況のもと、平成17年7月には食育基本法が施行され、国民運動として食育の推進に取り組むこと、特に学校における食育の推進が強く求められている。本研究では、食を取り巻く現状を踏まえながら、小学校家庭科における食に関する指導について考察した。
12 英語教育における指導・評価計画の在り方
 −4領域を有機的に伸ばす指導についての考察−
指導主事 山 本 博 通
 言語活動は、「聞く」「話す」「読む」「書く」の4領域の活動で構成されている。言語教育においては、それら4領域の活動を有機的に統合しバランスのとれた指導を行っていくことが大切である。そのためには、指導者が周到な指導計画を立て、その成果を検証・評価していくことが求められる。ここでは、4領域の活動が有機的に盛り込まれた指導・評価計画の在り方について検証する。
13 道徳の時間の評価の在り方と工夫

教職研修係長 島   恒 生
 道徳教育や道徳の時間における評価は、子どもの成長を見守り、支え、励ますものであり、受容的な姿勢で共感的理解を大切にしながら進めていきたい。特に、道徳の時間では、ねらいを子どもの意識で考えること、「評価のポイント」や「更に考えを深めさせたい子どもへの支援」を設定することなど、指導と評価の一体化を目指す工夫を進めていきたい。
14 総合的な学習の時間の充実と学ぶ力の育成

指導主事 西 川   潔
 中央教育審議会義務教育部会から先般出された答申で、総合的な学習の時間について「大きな成果をあげている学校がある一方、趣旨・理念が必ずしも十分に達成されていない状況も見られる」という報告が出された。総合的な学習の時間が始まって小・中学校で4年が経過した今、この時間を通して子どもたちに学ぶ力を育てる意義について考察する。
15 豊かな人間性を培う家庭教育の推進
 −「思春期」家庭の支援の在り方−
家庭教育係長 乾   義 輝
 思春期の子どもは、体の大きな変化に伴う心の変化からくる特有の不安定さを生み出すが、それは親から離れ、大人として自立していくための通過点でもある。この時期の子どもと向かい合う親は、新しい親子関係を築いていかなければならない。思春期の子どもとその親を取り巻く現代の環境や課題などを明らかにし、「思春期」家庭の支援に役立てる。
16 情報セキュリティについて
 IT支援係長 阪 部    清
   指導主事 宮 崎 博 文
   指導主事 薮 田 真 孝
   指導主事 廣 田 清 雄
 情報セキュリティポリシーの策定と所員の情報セキュリティに対する意識の向上に向けて、ネットワーク上の脅威・被害の内容やその手口について調査・研究し、脅威・被害から組織の情報資産を守る対策及び機器や環境面に関するセキュリティ対策について検討した。
17 子どもたちの心に響く道徳教材
 −道徳番組の活用を通して−
指導主事 中 村 典 史
 道徳教育における教材は多種多様であり、数多く作成され活用されている。
 道徳資料として活用の多い視聴覚教材、特に奈良県立教育研究所で制作している道徳番組の授業での活用方法と課題について考察する。
18 「集中力」を高める学習環境の設定について

障害児教育係長 中 村 美 和
 集中して課題に取り組むということについて、あまり明確な目標がないままに子どもは努力を強いられる。集中できる、できないとは何が違うのか。また同じ子どもで、同じ内容であっても、日によって、時間によって集中できる長さは違うこともある。「集中力」とは何か、また、いかに学習環境を設定するかということを明らかにする。教員のかかわりを含めた学習環境の様々な要素について考える。
19 発達障害児の視機能評価の在り方
 −盲学校との相談活動を通して−
 指導主事 稲 本 正 法
 私たちのまわりにある様々な情報の80%は視覚から取り入れられている。発達障害児は、認知や言語などの障害だけでなく、視覚の機能に障害がある場合も少なくない。しかし、発達障害児の教育的支援を考えるとき、「視力」や「視野」等、「みる」ことに注意が払われているのであろうか。今回は、盲学校と連携して行った通園施設や保育所との相談活動を通して、発達障害児の視機能評価の在り方について考える。
20 特別支援教育における個別の教育支援計画の在り方
 −小学校から中学校へのスムーズな移行−
 指導主事 中 村 英 子
 個別の教育支援計画は、特別支援教育を支える具体的な仕組みの一つである。本研究では特に小学校から中学校へのスムーズな移行を図るため、個別の教育支援計画と個別の指導計画の関連とその在り方、形式、作成について考察する。


研 究 集 録
T 奈良県立教育研究所長期研修員の部

研究の概要
1 特色ある学校づくりを目指す学校評価の在り方

長期研修員 大 谷 好 吏
 特色ある学校づくりを実現するためには、学校を取り巻く環境を分析し、学校にとって支援的に働く要因を基に学校ビジョンを設定した上で、教育活動を展開しなければならない。そして、その取組を自主点検、評価するとともに第三者からの評価も受け、その結果を保護者や地域の人々に対して積極的に公表し、地域社会との連携を深めなければならない。
2 地域に根ざした特色ある学校づくりの方途

長期研修員 井 作   謙
 今、学校は、地域や子どもの実態に応じて創意工夫を生かした特色ある学校づくりを進めることが強く求められている。そこで、本研究では、教職員の共通理解を図り、家庭や地域との信頼関係づくりを積極的に進める中で、地域の教育力を活用した特色ある学校づくりの方途について研究した。
3 伝え合う力を高める学習指導
 −「書くこと」を通して−
長期研修員 井 阪 恵 子
 「伝え合い」とは、互いの立場や考えを尊重しながら交流することである。本研究においては「書くこと」を通して伝え合う力を高めるために、子どもたちに身に付けさせたい能力を分析し、その系統を明らかにできるよう、能力表を作成した。また、2学年ごとのまとまりで6年分の年間指導計画を作成した。更に、具体的に単元を構想し、指導の在り方について研究を進めた。
4 子どもの豊かな人間性をはぐくむ家庭教育支援の在り方

長期研修員 左 川 康 彦
 子どもの豊かな人間性をはぐくむためには、家庭の教育力向上が求められる。そのためには、学校からの家庭教育の支援も必要である。そこで、学校の教育力を生かし、家庭や地域との連携を密にした様々な家庭教育の支援の在り方について考察する。
5 教育相談を生かした子どもへの支援の在り方

長期研修員 幸 所 こずえ
 来所してくる児童生徒とのカウンセリングや遊戯療法の実践を通して、不安や葛藤を抱える子どもの心の理解や自立に向けての支援の在り方について研究した。それを踏まえて、個を取り巻く集団を対象にした、心理的・社会的な成長を援助する教育相談活動について考察した。
6 マルチメディア教材を活用した小学校社会科学習の創造

長期研修員 松 好 伸 泰
 e-Japan戦略のもと学校に整えられつつあるIT機器を活用した、分かりやすい授業を実現するため に、より良いマルチメディア教材の開発及びその活用方法について研究した。そして、児童の情報活用能力を高めるための教材開発にも取り組んだ。
7 保健体育科教育におけるコンピュータの活用

長期研修員 西 川 茂 之
 高等学校における保健体育科教育の学習目標を達成するためのひとつの手段として、コンピュータの有効的な活用方法について考察した。また、コンピュータを活用した教材を作成することによる効果的な指導法について研究した。


研 究 集 録
U 奈良県教育委員会指定研究員の部

研究の概要
1 魅力と活力のある学校づくり
 −組織マネジメントの視点から−
生駒市立鹿ノ台中学校
     教頭 中 野 喜 久
 魅力と活力のある学校をつくるには、学校内外の環境変化に対応した組織開発や職能開発を展開していく営みである組織マネジメントの手法が重要となる。その視点から、魅力ある学びをつくり出すカリキュラムづくり、保護者や地域との連携、校務分掌の見直しと学校改善を促す学校評価を取り上げ、活力ある学校づくりの方途を検討する。
2 新しい学校事務の在り方を探る
 −学校運営への参画−
橿原市立香久山小学校
     主査 桝 田 三 貴
 市町村立小中学校事務職員の標準的職務内容一覧表の中の総務の区分にある「企画、運営に関すること」に着目し、学校事務職員が学校の中で専門性を生かし、行政職員としての経営的視点をもって学校運営に参画するとともに、事務部の総括者として学校全体の校務及び情報の共有化を図る方法について考察した。
3 魅力的な道徳の授業を進める指導の工夫
 −生徒の心に響く道徳の時間を目指して−
大和郡山市立郡山東中学校
     教諭 渋 谷 美 奈
 生徒の心に響く道徳の時間とは、生徒が道徳的価値の自覚を深める時間である。その充実のためには、話合い活動はとても大切である。生徒は、友達の考え方を理解し自分の考え方を明確にすることによって、道徳的価値の自覚を深めていくからである。そこで、生徒の多様な意見を引き出す工夫、また、その意見を整理することの大切さについて、実践を通して考えた。
4 遊びを通して学びをはぐくむ保育の研究
 −3歳児保育を中心に−
葛城市立磐城小学校附属幼稚園
     教諭 蟻 田 美 園
 幼児は幼稚園という集団生活の中で直接体験をしながら様々なことに興味や関心をもち、仲間との生活を楽しんでいく。そこで、日々の生活を通して幼児が多くの人や物とかかわり、自己発揮をしていくために必要な援助の在り方について、3歳児を中心に考察した。
5 子どもたちが主体的に取り組む学級活動を目指して
 −学級活動(1)の指導の工夫−
奈良市立六郷小学校
     教諭 井 上 直 一
 学級活動(1)においては、学級や学校での生活の充実・向上に向け、学級の子どもたち全員が協力して活動を進める。子どもたちが自発的、自治的な実践活動を積み重ねることで、学級の一員としての自覚を深めることができるとともに、社会性が培われ、個性の伸長を図ることができると考える。そこで、子どもたちの自発的・自治的な学級活動がより活発なものになるよう、評価規準や個人カードによる個に応じた指導の工夫、見通しをもった話合いを進めるための計画委員会の充実、主体的な活動に向けての自己評価の活用などを行った。
6 生徒の自尊感情をいかに高めるか
 −生徒の自己実現を目指して−
県立上牧高等学校
     教諭 谷 川 喜一郎
 前任校での部落解放研究部の活動やボランティア活動を通して、不登校傾向の生徒や人間関係をうまくつくれない生徒が、自己を変えていく姿を目の当たりにしてきた。本校においても、障害児理解推進校指定や交流などを通して、同様な生徒や新たに自己変革を見せる生徒もでてきた。これらの活動が生徒の自己変革や自己実現に影響し、そこには自尊感情というものが大きく関与しているのではないかと考え研究した。
7 豊かな人間性を培う家庭教育の支援
 −生徒の豊かな成長を目指した学校と家庭とのつながり−
田原本町立田原本中学校
     教諭 三 ア 佳余子
 中学生期の子どもは、依存と自立を同時に求め、夢と不安を抱きながら日々を過ごしているように思われる。この時期には学校での出来事を家庭で語らなくなり、学校、塾や習い事などに忙しい生活の中で、自分の気持ちや状況をゆっくり話す時間も少ない傾向にある。様々な形で心身共に大きな変化が見られる時期であるからこそ、学校と家庭とがそのつながりを見直し、一人一人の生徒の豊かな成長を支援する必要があると考える。そこで、思春期の子どもを学校と家庭が共に見守っていく取組について研究した。
8 学校教育におけるコンピュータの活用
−教育特区 教科「情報科」を通して、伝え合う力を高める−
生駒市立生駒台小学校
     教諭 松 尾 謙 吾
 教科「情報科」(情報教育推進特区認定)を通して児童の「情報活用能力」を高めるために、カリキュラムや評価規準の作成を行った。それを基に指導方法の工夫・改善に努めた。
 また、どのような研究組織を作れば全教職員が研究にかかわり、よりよい成果が出せるのか検討した。更に、個人情報の保護が叫ばれる中、教職員の情報セキュリティに対する意識を高める研修を行うなど、情報に関する管理運用体制の確立と整備に努めた。
9 特別支援教育の在り方
 −個別の指導計画の取組について−
田原本町立田原本幼稚園
     主任 桜 井 直 子
 特別な教育的支援を必要とする幼児を受け入れ、3年間保育していく中で、その幼児に対しての支援内容をとらえ、そのためにどのような手だてをしていくかを明確にする必要がある。そこで本園の個別の指導計画を作成するとともに、指導記録を見直し、具体的な支援内容や方法について研究した。
10 幼稚園における自閉症への教育的支援の実際
-集団生活の中で適応していくための環境・かかわりについて-
香芝市立下田幼稚園
     教諭 岩 村 晴 子
 自閉症の基本的な特徴は、他者との相互的なかかわりをもつことの困難、コミュニケーションの困難、反復的で常同的な興味・行動という3点にある。幼児期はその特徴が顕著に表れる時期であるといわれている。そのような自閉症の子どもが、教員や友達とともに安心して、楽しく幼稚園の生活を送ることができるための環境と人とのかかわり方などについて具体的な支援の内容や方法を探る。
11 特別支援教育の在り方
 ―自閉症への教育的支援の実際―
広陵町立真美ヶ丘第二小学校附属幼稚園
     教諭 杉 岡 千榮子
 自閉症のある子どもが、幼稚園生活の中で、教員や友達など信頼できる人を支えにして、自分の周りの世界や情報を理解し、安心して自ら行動することができるようにするための支援の方法を探る。