SSH活動と講演の記録(3)

第5回講演  「医者の仕事について」

医療法人 山下医院 院長   山下 豊 先生

医者の仕事の分類について

 整形外科:四肢・脊柱・筋骨格形など体の構造にまつわるケガを診る

 内科:精神科、リウマチ科、リハビリ科などを含む

 外科:眼科、耳鼻科、産婦人科、皮膚科

などの説明。また、その部類の違いや、現状などを詳しく例を挙げてお話ししていただいた。

医療と医学の違いについて

 医療とは対象とする患者さんを目の前にして治療を行うことを仕事とするが、医学は医療にかかわる学問をする分野のことである。日本では医学が置き去りにされているのではないか。医学のセンスをもって医療をすべきで、医療の進歩には医学の進歩がなければならないと言われた。今の医学生は病院を条件で選ぶので、地方大学や病院が深刻な人員不足になっている。

基礎医学と臨床医学の違いについて

 基礎医学とは実際に臨床の現場とは結びつかないが、臨床医学のバックとなる非常に重要な医学のことであるが、地味で面白みがないので人員不足になっている。臨床医学は、直接臨床の現場と結びつくのでやりたがる人が多いが、もっと基礎医学に力を入れるべきである。

 医者はその瞬間瞬間で判断をしなければならない大変な仕事であるが、「よかったあ」という声を聞くために仕事をしている。辛という字に一本加えて幸になる手助けをしたいと締めくくられた。


生徒アンケートより

 講演後に生徒から寄せられたアンケートでは、

「医者の仕事に対していろんな誤解をしていたように思う。」、

「患者さんに感謝されてうれしいと言われたことが印象的でした。」、

「患者さんが主人公となって治療して行くのが大事だというリハビリの話に感動しました。」、

「とても身近な話でわかりやすく、改めて医者を目指そうと思いました。」、

「医療と医学は区別して考えていなかったけど、医療と医学はつながっているが違うということがわかった。」、

「リハビリをすれば元に戻るのが当然だと思っている人が多いが、ある程度は戻るが戻らない部分もある。」、

「自分で自覚し、その上でなにができるのか考える必要があることに気づいた。」

等々の感想が見られた。将来、医師を目指している生徒もたくさん参加しており、進路選択に向けて良い指針になったと思われる。
 

  

 

第6回講演  「レーザー核融合のお話」

大阪大学 レーザーエネルギー学研究センター 助教 羽原 英明 先生

 1958年9月の第2回原子力平和利用国際会議(ジュネーブ会議)を契機に研究の公開が始まり、40年以上が経過している。現在の主要エネルギー源である石油や原子力(核分裂)に比べ、より魅力的なエネルギー源を開発することが核融合研究の使命である。この点において、レーザー核融合に代表される慣性核融合は最近の研究の進展が著しく、核融合炉工学分野にはトカマク型を含むすべての磁場閉じ込め核融合と原理・技術基盤が異なる部分も多く、開発プロセスも違っていることから、核融合の先進炉方式として、その研究の発展に大きい期待が寄せられている。レーザー核融合は、基礎となる高エネルギー密度プラズマ科学と高出力レーザー工学の急速な進歩により、新しい研究段階に入ろうとしている。このような状況を踏まえ、第120回核融合会議(平成8年5月30日開催)において「レーザー核融合の現状」が報告され、核融合会議は、レーザー核融合に関し引き続き議論することとした。これを受け、核融合会議計画推進小委員会の下に、レーザー核融合検討ワーキンググループが平成8年7月に設置された。
 第三段階核融合開発基本計画においては、レーザー核融合等の研究開発に関し、「トカマク型以外の装置は、今後の研究開発の成果によってはトカマク型を上回る閉じ込めを実現する可能性を有していること、トカマク装置による研究開発への貢献が期待されていること等から、これらの研究開発を進める」と述べられている。当ワーキンググループの検討においては、最近のレーザー核融合科学研究の進展と第三段階核融合開発基本計画の主旨を考え合わせて、「当該研究開発の現状を整理するとともに、研究課題を抽出・評価し、関連研究分野との連携も視野に入れた研究開発の在り方を明らかにする」こととした。

 
レーザー核融合の原理と特徴

 レーザー核融合は、冷却固化した重水素(D)と三重水素(T:トリチウム)の球殻状に形成した燃料ペレットに強力なレーザーパルスを照射して、核融合反応を起こすものである。核融合反応は重水素とトリチウムが高速で衝突する際に起こり、衝突の頻度は重水素とトリチウムからなるプラズマの温度と密度が高いほど多くなり、重水素とトリチウムのプラズマの密度を固体の密度の1,000倍程度にできれば、十分な核融合反応が起こる。すなわち、レーザー核融合においては、高密度状態を作り出すことにより、磁場閉じ込め核融合のように磁力線を用いてプラズマを長時間閉じ込めることなく十分な核融合反応を起こすことが出来る。プラズマの密度が高ければより小さなプラズマとなり、プラズマを発生させるために必要なレーザーエネルギーは小さくても十分な核融合反応を起こすことが出来る。この核融合反応の持続時間はプラズマの自由膨張すなわち“慣性”で決まるため、この方法は、慣性核融合(IFE, Inertial Fusion Energy)の一種である。
         

 レーザー核融合は、以下の過程を経て実現される。
(1)プラスチックに封入した固体D-T層を持つ燃料ペレットに強力なレーザーを一様に照射すると、燃料ペレットの表面に高温のプラズマが発生し、プラズマは外側へ向かって膨張する。

(2)このプラズマの膨張の反作用で、ペレット表面に超高圧が発生し、燃料は球の中心に向かって加速され圧縮される(「爆縮」と呼ばれる)。

(3)燃料ペレットの内部に存在する中空部分に重水素とトリチウムの混合気体が存在すると、この部分は高温のプラズマ(ホットスパーク)に、固体の燃料部分(重水素とトリチウムの混合ガスを冷却固化させたもの)は固体密度の1,000倍程度に達する低温の超高密度プラズマとなる。

(4)中心のホットスパークとそれを取りまく超高密度プラズマ(主燃料)よりなる二重構造のD-Tプラズマが生成され、ホットスパークの質量密度ρと半径Rの積ρR及び温度Tが核融合の点火条件を満たすと、核融合反応が急激に進展(点火)し、この部分より放出されたα粒子で周りの主燃料が加熱され、主燃料部に核融合反応が広がり、レーザーにより投入されたエネルギーを上回る核融合エネルギーが高エネルギー中性子として放出される。

 レーザー核融合では、以上のように燃焼プラズマの密度が固体密度の1,000倍以上に達し、1,000億分の1秒以下の極短時間で半径約0.1mmの狭い領域において核融合燃焼が完了する。

 (1)から(4)の過程を毎秒数回繰り返すことにより、発電に必要なエネルギーを取り出すこととなる。

 レーザー核融合炉プラント内部では、核融合燃料を充填したペレットを炉内に打ち込み、これを強力なレーザーで照射して爆縮させる。外部からエネルギーを供給することなく連続して運転させることを目標に研究している。