SSP講演会の概要と記録(2)

第3回講演 「カバの汗はなぜ赤い?」

京都薬科大学薬学部 准教授  橋本 貴美子  先生

 自然現象解明のための科学が、人間生活に役立つ成果をあげることがあります。例えば、年に数回しか摂食しないドクトカゲが、自らの低血糖を保つために血液中に含んでいるタンパク質のエキセンディンについて、ヒトの血液内の安定成分として糖尿病患者への治療に効果があることが判明しました。また、クロバエのウジが出す排泄物に含まれるアラントインは、傷口を早く治す効果があり、すでに外傷治療薬として利用されています。

 ところで、カバの汗はなぜ赤いのでしょうか? ゾウの汗は青く、ガゼルの汗は黒い。カバの汗は、最初無色で、2~3分で赤くなり、その後茶色に変化します。汗には、皮膚を紫外線や細菌から守る効果もあると言われます。動物園のカバから採取した汗をゲル濾過すると、赤色と茶色とオレンジ色の3つの成分に分離されました。赤色の成分をヒポスドール酸と命名し研究したところ、紫外線の吸収効果や、細菌への抵抗性が確認できました。また、無色のホモゲンチシン酸の2分子が結合すると赤色となり、その結合反応はカバが分泌する酵素で進められていることも分かりました。茶色に変化する原因は、まだ分かっていません。

 生き物の形の中に現れる形やパターンについても興味深いものがあります。花びらの数の増え方や、ヒマワリの種子の並び方は、フィボナッチ数列に当てはまります。その数列の隣り合った数の比の収束する値が黄金数で、最も美しいとされる縦横の比とされています。分かっているようで分からないことは、一杯あります。感じ取ることと気づくことが大切で、小さい分野に拘らず、広く学んでほしいです。 

 

 

 

第4回講演 「整数と素数の不思議な世界」

神戸大学理学部数学科  教授  谷口  隆  先生

 素数についての講義

  1. 素数について…素数は無限に存在する
  2. 未解決問題から…双子素数予想、コールドバッハ予想
  3. 素数の現れ方…4による剰余で分類することができる
  4. 新しい概念の導入…数の世界を複素数まで広げると、4で割って1余る数はすべて素数ではなくなる

 素数については中学校で学習済みであって、数としてはとても身近な(分数や、ましてや無理数のようになんだかわからない数ではないので)ものであるが、生徒たちにとってはせいぜい素因数分解に用いる程度の数であって、単なる整数の中の1種類にすぎない。

 これだけ身近な整数であるが、中学校や高校の数学では、ほとんど扱うことがない。たしかに、整数を扱う場合、彼らの知識だけではとても太刀打ちできないのであるが、生徒の柔軟な感覚を持ってすれば、十分にイメージできるはずである。

 今回「整数論」についての講義を通して、生徒たちは、これだけ身近な数の中にもわからないことがたくさんあって、それを論理的に研究するおもしろさを味わうことができたのではないかと思う。

 また、素数が無数に存在するという事実は中学校の学習内容であるが、その証明がちょうど今数学Aで学習している「背理法」を用いると鮮やかに解決したり、一見何の規則性もなく並んでいるように見える素数が、実はある規則性を内に秘めていたりと、新たな発見の連続であった。また、この身近な整数の謎を解き明かすために、新しい概念の数を導入することにより解決することを知り、数体系の拡張の必要性をより自然に受け止めることができたのではないかと思う。