SSH活動と講演の記録(4)

第7回講演  「せんいから色々な事業へ」

㈱ 旭化成 "拡"せんい事業企画室 課長 巽  俊 二 先生

 旭化成株式会社は、昭和6年(1931年)に延岡で水力発電を元に基礎化学品の開発から創業した。旭化成グループとして、再生繊維や化学肥料、石油化学から合成繊維、住宅建材、エレクトロニクスや医療へ20年位をサイクルにして各事業に拡大してきた。事業拡大の方向と理由については、基本は各分野を見通して将来必要とされるものに重点をおくことから始まっている。今までの先人の培ってきた製造技術、販路、原料、装置、資本、人材などを生かしていくことが新分野の開拓の基盤となった。日本において、明治後期に水力発電が始まった。この電力を元にカーバイドと窒素から石灰窒素を作り石灰窒素を分留してアンモニアを得られる。旭化成では、アンモニアから硫酸アンモニウム(肥料)を製造し、カザレーアンモニア合成技術を導入してきた。また、アンモニアから銅アンモニウムレーヨンを作り繊維業界に進出し、再生セルロース繊維の溶剤の開発をした。本社は繊維業界の広がりを見て、アクリル繊維へと進出した、アクリロニトリルの原料(石油化学産業)製造へと拡大していった。

 私たち技術者の醍醐味は新しい事業をつくってやるぞ!という意気込みから生まれる。現在では、大量水処理膜「マイクローザ」、ウイルス除去フィルター「プラノバ」プロパン法によるアクリロニトリルの製造、高感度小型磁気センサー「ポール素子」などの開発を手掛けている。

 これまで自分は、主にアクリロニトリル繊維の研究開発に携わってきた。アクリロニトリル繊維の各製造過程において、せんい断面形状をコントロールすることにより、風合い等の改良をしたり、凝固基礎、用途開発の研究をされた。凝固の状態が変われば様々な微細構造を創り出すことができ、これがフィルター透過膜への利用、水濾過、人工腎臓、エイズウイルス濾過、様々な対象物質と孔径の関係からさまざまな物質の透過膜として利用することができる。

 技術者の仕事とは、①現象を理論化すること(自然との対話)、②理論を検証すること、③自然現象をコントロールする技術開発、このことからよりよい物を創出することができる。

 自分は、現在”拡”せんい事業企画室に所属しており、企画室長としてこれからの方策として「10年~15年後の成長領域へ旗を立てよ!」(将来の成長領域を構築せよ)を掲げ、これからの有望事業の企画&提案に向けて5つの重要項目をあげておきたい。①未来予測(成長分野の選択)、②自社の強み抽出、③事業機会選択、④技術獲得(自社開発か導入)、⑤ビジネスプラン策定、この過程から、自らの提案を事業化していくことが必要とされる(企業人の醍醐味)

 また、これからの必然性のある成長領域として3つの分野をあげると、①情報家電:より便利な社会への欲求、②環境・エネルギー(燃料電池、水を含む):地球スケールの課題、③健康分野:高齢化(先進国)

 これからのエネルギー分野の例としては、①リチウムイオン電池:軽量・長寿命の実現、電極、電解液、セパレータの開発、②燃料電池:普及には水素の貯蔵がネック、安全に貯蔵、水素吸蔵物質が必要、③太陽電池:エネルギー変換効率30%以上で低コストのもの、などがある。

 事業企画に携わり感じたことは、理系といっても、歴史や地理、法律、経済、人文など色々なところに目配りが必要であると思う。高校生の時、理系であっても人文などのさまざまな分野を学習することが必ず将来役立つ時が来る。これからの技術開発においては、「T型人間になれ」(町田会長 シャープ株式会社)が必要である。普段から幅広い視野を持ち、注目すべきことがあればさらに掘り下げていく、このことが新しいものの発見につながる。


  

 

 

 

 

 

  

第8回講演  「経済学と私たちの生活」

大阪市立大学大学院 経済学研究科 教授 橋本 文彦  先生

・経済学の対象…生活と人生が経済学の対象

・経済学を使って…人々の行動の分析、それらを合わせたときに起きる現象の分析、人々の選択を基盤とした制度設計

・費用構造と料金体系…例として携帯電話の料金体系

・子ども手当ての分析…税制改革の視点、恒久的か一時的か?子ども手当ての持つ外部性について

・外部性…シャドープラス

・経済学の分析手法…論理的、計量的、ケーススタディ

・経済学のツール…最適化問題、確率過程、ゲーム理論

・経済学の基本コンセプト…経済活動は人々のコミュニケーション

 

  「経済学」というと株式市場だとか、世界経済といったように壮大なテーマのみを扱っていると思っていたり、いかにしたら儲かるかを勉強できると思っている人がいるが、その認識は正しくない。

 経済学の対象は「人々の生活と人生」であり、様々な場面での選択における人々の行動を分析し、それらを合わせたときに起こる現象を分析し、その結果を基に制度設計に活かすことができるのが経済学である。経済学は、私たちの生活と深く結びついている。例えば、身近な例では、携帯電話の料金体系がそれにあたり、生徒諸君の中にも自分で払っている人もいると思う。

 

生徒の感想から

 「携帯電話の料金体系」については、生徒の印象に強く残っているようである。「こうして、自分は携帯電話の会社に囲い込まれているのだなぁと思った。」という意見に代表されるように、これからの生活における選択の指針となったようである。

 また、現在注目されている「子ども手当て」についての解説を受け、政治の行方に注目する生徒も多いことがわかる。

 全体としては、「知らなかったことがいろいろとわかって経済学に興味を持てた」や、「経済学とはどういうものかという印象が180°変わった気がする」などの感想が多くよせられ、インパクトのある講演であったことが伺える。