平成24年度 SSP講演会(4)

第7回講演 「光とは何か? 光科学への招待」 

大阪大学 光科学センター 特任教授 安食博志 先生

 最初に、中学時代から物理学への興味があったことや高校時代の学生生活を紹介して頂いた後、光について、速さや性質などその実態を解明してきた歴史を紹介しながら光とは何かについて教えて頂いた。

 まず、デカルトとガリレオの例を挙げながら、「光の速さとは有限なのか、それともどんなに遠くても瞬時に伝わる無限大なのか」というテーマについての歴史を紹介された。初めて光の速さを求めたのはレーマー(1644~1710)であった。レーマーは光の速さが有限であると仮説を立て、木星の衛星イオの食の周期が一定でないのは木星と地球の距離が変化するためであると説明した(1676)。このときレーマーが発表した光速の値は、秒速約20万kmであった。レーマーの光速有限説から半世紀あまり後、レーマーとは全く違った方法で光速を求めたのはブラッドリー(1693~1762)であった。もともと恒星の年周視差を検出しようと、りゅう座γ星の正中高度を精密に測定していたブラッドリーは、年周視差ではない正中高度の変化を発見した。この変化は、光の速さが有限であるために、天体の位置が地球の公転方向にずれて見えるという年周光行差であった。ブラッドリーはこの年周光行差の大きさと地球の公転速度から、光の速さを秒速約28万kmと発表した(1728)。

 地上での実験で光速を初めて測定したのはフィゾー(1819~1896)であった。フィゾーは1850年に、歯数の多い歯車をチョッパーとして用い、8.6kmの距離を光が往復する時間から光速を求めた。その翌年(1851)、フーコー(1819~1868)は歯車の代わりに回転鏡を用いて光速測定に成功した。

 次に「光は粒子か波か」というテーマでは、粒子説と波動説についての説明をしていただいた。ニュートンは「光をプリズムに通していろんな色に分かれるのはいろんな粒子があるから」、「光は曲がらない、波だと曲がってしまうから」として粒子説を唱えた。当時は粒子説が有力であったが、それに反対した波動説としてホイヘンスの原理が説明され、回折という現象は粒子説では説明できない問題点でもあった。さらにヤングの実験により、光の干渉縞という現象では、波動説で説明することで、明るいところは明るく、暗いところは打ち消し合うようにして暗くなるということで説明がついた。そして、パリのアカデミーの懸賞金に応募したフレネルは波動説で回折の現象や光の直進性も説明ができた。このことで、光の波動説が有力になった。また、光が空気から水に入るときに屈折する理由として、波動説での説明では水の中の方が空気中より光の速さが遅くなるからであり、粒子説ではその逆であった。そこでフーコーの実験より水中の速度は空気中の速度の4分の3であることがわかり、光は波動であるということが判明した。

 続いて「光の正体は何か」というテーマでは、電気と磁気について説明があった。これは切っても切れない関係であり、マクスウェルの発見した電磁波では、電磁波が伝わる時には、電場の変化が磁場を生み、生まれた磁場の変化がさらなる電場を生む。電場と磁場が交互に相手を生成していく。マクスウェルの電気と磁気の方程式より、波としての式ができ、真空中の光の速さと一致したことで光は電気と磁気の波であることを発見した。

 次に光というものを考えることによって生まれた学問について触れていただき、特にアインシュタインについて説明があった。アインシュタインは「もし飛んで行く光の矢を光速で追いかけたら、光の矢はどうみえるのだろうか?」と考えた。光を光速で追いかけたとしたら、光も止まってみえるのだろうか?アインシュタインの直感は否定した。経験的にもマクスウェルの電磁場方程式から考えてみても、そんなことは有り得ないはずだ。アインシュタインは「光は誰からみても光速で走る光でなければならない」と考えた。そういう意味で、光速度Cはある絶対的な基準なのである。アインシュタインは、次のような答えに辿り着いた。「光は誰からみても光速で進む。どんなスピードで運動している観測者が測っても光の速度は常に光速度Cになる」これこそが、特殊相対論の1つの柱である「光速度不変の原理」である。特殊相対論のもう1つの柱は「特殊相対性原理」である。これは次のような考え方である。「じっと静止している人にとっても動いている人にとっても、自然の法則は同じように成り立つ」(ただし、特殊相対性原理では、動いている人といっても等速直線運動に限っている)これは「自然の法則は誰に対しても同じように成り立つ」という、ガリレイ以来の考え方を広く捉えたものである。この原理においてアインシュタインは、絶対空間や絶対時間を放棄し、代わりに「光速度」という絶対的基準を設定した。すなわち、アインシュタインの理論によれば、“時間や空間は変わり得る”と考えることになる。以上のように、光の解明に果たしてきた実験と理論の役割や、光の考察から特殊相対性理論や量子力学が構築されていく様子が説明された。

 さらに、研究者を目指す生徒に対して推薦図書の紹介もして頂いた。やや専門的で高度な内容も含まれていたが、50名ほどの生徒は熱心に聞いていた。

生徒の感想から
  • 少し難しい内容もあったが、光や波について興味を持つようになった。
  • 物理に対する興味・関心が沸いた。
  • 科学者の研究内容の歴史的な経緯がよくわかっておもしろかった。
  • 今後もこのような機会を増やして欲しい」
  • 将来、宇宙や光についての研究をしていきたい
  • 特殊相対性理論や量子力学に強い関心を持ったので、今後物理学を学びたい。

 等の感想が多くよせられた。生徒にとっては大変面白く、意義深いお話で、熱心に最後まで聞いていた。

 

 

 

第8回講演 「コンピュータグラフィックと3Dの世界」 

神戸大学大学院工学研究科 准教授 黒木 修隆 先生

 講師は本校出身の情報通信工学専攻の黒木修隆准教授。まず、映画とコンピュータグラフィックについて講義を受けた。

 映画は20世紀半ばまではフイルムで撮影し、編集は大変な作業であったが、今はデジタルで記録、つまり全て数値で記録している。数値を変えることにより、色合い、明るさなど簡単に変えることができる。

 次に2つの画像を重ね合わせること(モーフィング)の説明を受け、実際に人の顔と猫の顔を重ね合わせる実習を生徒とともに行った。人の目の位置と猫の目の位置の中間点に、重ね合わせたものの目を描き、同様に鼻、口、そして輪郭も中間点の位置にトレースすることによりモーフィングが完成する。

 生徒の作品をいくつか紹介し、出来映えのすばらしさに歓声があがった。発展として、中間点ではなく、いろいろな内分点を取ることにより、人間寄りの顔、猫寄りの顔ができる。これを連続的に変化させていくことにより、映画のように変身する映像を作ることができることを学んだ。実際に「ターミネーター2」の変身シーンを鑑賞した。

 また立体映像(3D)の技術について講義を受けた。テレビの発展の歴史を学んだ後、立体めがねを全員分用意していただいて、人が3次元を感じる仕組み(アナグリフ方式の原理)を体験しながら学んだ。しかし、1分以上見ると頭が痛くなったり、気分が悪くなったりと欠点も多くあった。長時間見ることができる技術として、偏光方式による立体映像の原理の講義を受けた。近未来的な技術として、レーザー光により空中投影するというものであり、研究段階では成功しており、いずれ家庭用に発売される可能性があることに目を輝かせて聞いていた。

 最後に、国立天文台のプラネタリウムの立体ソフトウエアを使って、宇宙空間の旅を体験し講義を終えた。

 

生徒の感想から

 講演後のアンケートには、「数学や物理の学習の必要性がわかった。」などの意見が多かったことから、いろいろな技術の基礎となるものが、今学んでいる学習内容であることに気付いたのではないかと思われる。

 難しい内容も、黒木先生のゆっくりとした口調で、なるべく専門的な用語を用いずに講義いただいたので、生徒もわかりやすかったのではないかと考えられる。