平成25年度 SSP講演会(3) 

第5回講演 「木はなぜ長生きか?-リグニン-地球を変えたもの」 

京都大学大学院 農学研究科  津山 濯 先生

 長い間存在する森林は、たくさんの生き物にすむ場所と栄養を与えている。長持ちする木材は、建築物や家具、保管できる燃料として昔から用いられてきた。このように私たちのまわりある木は、人類の文明を支えてきた。これらのことは木が長生きすることと深く結びついている。なぜ木は長生きなのか、このことに深く関わる物質が、リグニンである。今回の講演では、大学での最先端の研究を紹介しながら、リグニンが地球を変えた流れに迫った。

1.木はなぜ長生きか?長生きするための木のつくり

  1. 虫にやられにくいよう、木の中心に色の変わった心材がある。辺材とあわせて木部という。この材を形成するために、樹木だけに放射組織が存在する。前年以前に形成された木部で生きているのはほとんどこの組織だけである。中心の色の変わった材はすべて死んでいる。
  2. 長年分裂し続ける形成層が存在する。これが分裂するので、木は長時間肥大成長する。タケは草、数年生きても肥大成長しないものは草。
  3. 細胞壁にリグニンがある。木化しているため、細胞死の後も虫にやられにくい。植物細胞壁の主要成分はリグニン、ヘミセルロース、セルロース。さらにリグニンにはGSHのタイプがあり、モイレ反応によってSリグニンを識別し、針葉樹、広葉樹、単子葉類を区別できる。

2.リグニンの生合成-輸送メカニズムの謎-

  1. リグニン前駆物質は細胞内でつくられ、細胞壁へ輸送され重合する。したがって輸送される必要がある。
    輸送メカニズム
    a.エネルギーを使わず、濃度勾配に従った受動輸送            b.エネルギーを使い、濃度勾配に逆らった輸送つまり能動輸送(すべてタンパク質が関与)                                          c.小胞輸送(b.によって小胞内に輸送してためこみ、小胞ごと動かす)

3.樹木での実験結果

  1. リグニンの中間体とされるコニフェリンが対向輸送される
  2. 輸送メカニズム:V-ATPaseによるH+勾配を使った対向輸送。V-ATPase=液胞H+ATPase 液胞だけでなく、小胞体やゴルジ装置にも存在する。植物だけでなく、最近、動物でもみつかった。ということは、液胞貯蔵だけでなく、小胞輸送の可能性もある。

 

生徒の感想から

 生徒は、集中して、講義を受けていた。リグニンのことを初めて詳しく知る生徒がほとんどで、新しい知識として新鮮だった。リグニンが、植物の陸上進出に大きく貢献したことに驚いていた。

 地球上にたくさんある物質にもかかわらず、合成や運搬の過程が解明されていないということで、研究の最先端を紹介していただいた。中心的な内容は高度であったが、身近な生きものメカニズムを研究することのおもしろさに気づかされた生徒もいた。

 また、研究したいことがあれば、世界へ発信することができ、世界の研究者とも話をすることでまた自分の世界が広がっていくことを、講師の先生から教えていただいた。

   

  

第6回講演 「大学(医学部)入学はスタートライン-イケてる人材(医師)に求められる資質とは?-」 

大阪市立大学 医学部附属病院 総合診療センター 大学院医学研究科 総合医学教育学 准教授 首藤 太一 先生

 まず医師が患者に求められているものとして、技術、人柄、コミュニケーション力などがあり、たとえ1年目であろうとプロとしての心構えとその資質は必要である。そしてプロとは咄嗟に起こったトラブルに対しても素早く対応できなくてはいけない。

 続いて、大学施設にあるSSC(スキルシミュレーションセンタ―)でのトレーニングについて説明され、ここでのスキルアップの方法として大事なことは、常に「次は自分がやらなければならない」という意識で実技を観察するいうことであった。

 次にどういう人材が「遣える」人材、求められる人材であるかを伝えるために、会場で模擬面談が行われ、共感的態度として、目を見る、話を聴く、うなずくことを通じて患者を理解することが最も大切なことであること。そしてこれは、医師だけではなく、コミュニケーションの基本として、誰もが必要なことであることが教えられた。

 アメリカの医学教育についても紹介され、いい医師に必要なものとして、スキル、知識、マインドセット(心意気)の3つがあげられ、アメリカでも教えるのが一番難しいのは、マインドセットであった。マインドセットは人間力であり、つまりはコミュニケーション力である。

 プロの医療人の仕事は2つであり、病気を治癒(cure)することと癒す(care)ことである。そしてcureできなくてもcareすることはできる。そのためには必ずコミュニケーションが必要であり、その第1歩はあいさつである。そして、次に感性を磨くためにいろんな価値観を知っていくことが大事。

 最後に、寝たきりの高齢者の危篤状態での対応の仕方から、コミュニケーションをとるときは知識や技術だけでなく、患者や家族を理解するためであることを忘れず、病だけでなく人、家族をみることが大事であることを教えていただいた。

 そして、求められる人材になるためには、受け身でやらないで何でも自分で気づいてやってみる。そしていろいろなことを経験しながら、感性を育んでいく。工夫ができる、深みがある、引き出しの多い人が求められる人材ではないか。「太い根、太い幹に輝く花は咲く、無駄だと思うことが人生の滋養になる。」良医になるという意味だけでなく、いい大人になるという意味でも感性、コミュニケーション力を磨くことが大切である。

 

生徒の感想から
  • 医師としてだけでなく人として大切なことを教えて頂き大変感動した
  • 自分の生き方をもう一度考え直すきっかけになった
  • 具体的な内容でわかりやすく話していただき、医療に携わる仕事の大変さや意味を理解できた
  • 医師や医療人としての覚悟と意欲がわき出てきた
  • 医師の道を考えていたが、その大変さに気づき、もう一度しっかり考えようと思った

など、講演後の生徒たちは自らの進路に向けて積極的にそしてより具体的に考えるようになってきたことが伺える。また、自分自身の生き方まで考えを深めるようになっており、非常に意義深い講演になったと思われる。