平成26年度 SSP講演会(2)

第3回講演 「大学(医学部)入学はスタートライン -イケてる人材(医師)に求められる資質とは?-」

大阪市立大学医学研究科 総合医学教育学 教授 首藤 太一 先生

 有名プロ野球選手のデビュー当時の低迷に対するファンの野次を例にして、医師1年目であったとしてもプロフェッショナルとしての自覚が必要なこと、そしてプロフェッショナルとはマニュアルにない対応力を要求されることである。

 最初に、医学部1回生に対する講義内容を紹介して頂きながら、自分の意見をしっかり持って、まわりにとらわれず意思表示することの大切さを教えていただいた。

 また、大学病院勤務外科医の当時の実情は、外来患者や手術、自らの研究、後輩の論文チェックなど週の労働時間が100時間を超えており、今では考えられない状況であった。家族との夕食も年間数えるほどであり、給料もかなり低いものであったが、このような状況でやってこられたのはプライドと責任感があったからである。

 さらに「おかげさま」と「お返し」という考え方を持つようになり、大学の授業料には多額の税金を使って援助をしていただいて医者になることができたのだから感謝の気持ちを忘れず、今は少しでも還元していくことが必要だと思っている。

 続いて、大阪市立大学内にある2007年にできたSSC(スキルシミュレーションセンタ―)は、学生・医師・看護師等が現場に出るまでの間にスキルアップのために手技等のトレーニングを行う、非常に利用率の高い施設である。ここでの実習をする際に、スキルアップの方法として大事なことは、常に「次は自分がやらなければならない」という意識で教授の実技を観察しなくてはいけないということである。教える先生も見せるだけであり、現場では一人で対処しなくてはいけないこともあるのだから必死で見て覚えるようにしなければならない。スキルアップの方法として必要な3つの力とは、「みる力」「きく力」「うなずく力」である。

 次にどういう人材が求められる人材であるかをわかってもらうために、会場で模擬面談(Aの医師、Bの医師と患者)を行い、その違いがどこにあるかを気づかせた。人の目をしっかり見てうなずいてくれる事の大切さは、つまり共感的態度の大切さであり、目を見る、話を聴く、うなずくことを通じて患者を理解することが最も大切なことである。これは、医師だけではなく、どこの世界でも通用することである。コミュニケーションの基本として、共感的態度、つまり目を見て、話を聴き、うなずくことが大切であり、逆に頬杖や足を組むなどの態度は相手に不信感を与えてしまう。

 次にアメリカの医学教育について、日本との違いなどの説明があった。アメリカの医師を目指す学生には日本人よりも具体的で確固たる志望理由を持っている。そして、いい医師に必要なものとして、スキル、知識、マインドセット(心意気)の3つがあげられ、アメリカでも教えるのが一番難しいのは、マインドセットである。マインドセットは人間力であり、つまりはコミュニケーション力である。最近の日本の若い医師の中にもその力に欠けている者が多い。これは長年かけて個々の感性を磨いていかなくてはいけないものなのに、このコミュニケーション力をつけることを学生時代で後回しにしてきたのではないか。つまり、学生時代は解答を選択するのが得意であり、無駄なことを省くようにして生きてきた。しかし、世の中のことは知っておくべきであり、「無駄」と言われることにもやっておくべきことが多い。だから、世の中に「無駄」と言われることは一つもないし、無駄といわれることは「ゆとり」であり、それが「豊かさ」になるのではないか。「小さな根っこで細い幹では大きな花は咲かない」のである。つまり、マインドセットは人間力=コミュニケーション力である。そして、コミュニケーション力はリスニング力(感じる力)、リアクション力・レスポンス力(うなずく力)、スピーチ力(伝える力・メッセージ力)である。

 プロの医療人の仕事は2つであり、病気を治癒(cure)することと癒す(care)ことである。そしてcureできなくてもケアすることはできる。そのためには必ずコミュニケーションが必要であり、その第1歩はあいさつである。そして、次に感性を磨くためにいろんな価値観を知っていくことが大事。世の中のことは知っておく必要がある。だから世の中に無駄なことは一つもないし、患者の心理を理解するためにもしんどいことや痛いことも経験する必要がある。その経験が自分の力になる。そうすることでコミュニケーション力がついてくる。コミュニケーション力は人間力、この向上に心がけるべきである。

 講演後、生徒からは「終末医療について」や「小児科医療の問題点について」などの質問が出されるなど、非常に関心を持って取り組んでいる様子がうかがえた。

 講演後は自らの進路に向けて積極的にそしてより具体的に考えるようになっており、さらに自分自身の生き方まで考えを深めるようになり、非常に意義深い講演になったと思われる。

 

生徒の感想から
  • 楽しく、わかりやすく、医療について大切なことを教えて頂き大変感動した。
  • 自分の進路について考え直すきっかけになった。
  • 具体的な内容でわかりやすく話して頂き、医療に携わる仕事の大変さや意味を理解できた。

など、高評価のものが多かった。 

 

 

 

第4回講演 「世界の多文化・日本の多文化」 

大阪大学国際教育交流センター 准教授 大谷 晋也 先生

 平成26年10月27日(月)、全8回にわたるSSP講演会の第4回講演が行われました。

 今回は大阪大学国際教育交流センター准教授の大谷晋也先生に「世界の多文化・日本の多文化」の題で講演をしていただきました。

 講演はまず、様々な国で作られた世界地図や実在する国境線の写真を見ることから始まり、大谷先生の説明と写真から、私たちがいかに自分達で勝手に作り出した地球観を抱いて生きているかということに気付かされました。

 その後、クイズ形式で、世界において話者の多い言語についてのお話がありました。話者の多い言語10位以内には、中国語や英語が入っていることはもちろん予測できますが、それ以外にもヒンディー語(第3位)やアラビア語(第5位)、ベンガル語(第6位)など、全く予測すらできなかった言語が入っていたのは驚きでした。

 講演の最後は、「他者を理解したと思う時は、自分の理解の枠に相手を無理矢理押し込んでいるだけで、本当の意味の理解にはなっていない。」という大いに考えさせられる言葉で締めくくられました。

 ではこの国際的な社会で、様々な文化を持った人々を理解し、共に生きていくにはどうすれば良いのか。今後、その答えを模索していくことこそが、大谷先生から今回の講演で出された宿題でしょう。

 また今回の講演で、私たちが今生きている地球、そして日本とは実はどのようなものなのか、改めて考え直す視点を与えていただいたように思います。