平成27年度 SSP講演会(1)

はじめに

 科学に対して生徒たちがもつイメージはニュースなどで耳にしたことのある分野について「おもしろそうだな」と漠然と思っている程度で、具体性に欠けるきらいがあります。

 そこで、SSP講演会では、自然科学およびその関連分野について造詣の深い講師を大学や研究機関等からお招きし、最先端の内容を具体的にお話いただくことによって、生徒の興味・関心を深める意図をもって実施されます。

 また、今、自分が身につけるべきスキルについて生徒に再認識させ、自らのキャリアデザインを行う動機付けとさせる意図ももって行われるプログラムの一つです。

 

講演会の概要

  

実施日

講  師

テ ー マ

第1回 9月28日(月) 大阪大学 安食 博志 先生 光とは何か?-光科学への招待-
第2回 9月29日(火) 京都大学 大槻 初音 先生  協調社会の進化ー社会生物学入門ー
第3回 10月6日(火)

外務省大臣官房国内広報室 篁園 誓子 先生 

海外事情から考える、国際的なものの見方・考え方
第4回 10月28日(水)

(株)電通 関西支社 鈴木 契 先生 田中 義一 先生

広告・クリエイティブという仕事
第5回 10月29日(木)

大阪市立大学

首藤 太一 先生

医学部ってどんなとこ?ー良き医療人に求められること-
第6回 10月30日(金) 大阪大学 小川 裕之 先生 実験数学入門
第7回 11月10日(火) 京都大学 北川 宏 先生 現代の錬金術:人工的にパラジウムは作れるか?
第8回 11月17日(火) 大阪大学 石黒 浩 先生 ロボットと未来社会

 

第1回講演 「光とは何か?-光科学への招待-」

大阪大学 光科学センター 特任教授 安食 博志 先生


 光の速さや性質などその実態を解明してきた歴史を紹介しながら光とは何かについて教えて頂いた。

 まず「光は粒子か波か」というテーマで、ニュートンは粒子説を唱えていた。これは「光をプリズムに通していろんな色に分かれるのはいろんな粒子があるから」、「光は曲がらない、波だと曲がってしまい、回折という現象も起こるはずである」という理由からであった。当時は粒子説が有力であったが、それに反対した波動説としてホイヘンスの原理が説明され、光の屈折や回折という現象は粒子説では説明できないが球面波という波として説明した。しかし、ホイヘンスの原理も完璧ではなかった。

 さらにヤングのスリットの実験により、光の干渉縞という現象では、波動説で説明することで、波の山と山は明るく、谷と山は打ち消し合うようにして暗くなるということで説明がついた。しかし、やはり、粒子説が有力であった。

 そして、フレネルは波動説で回折の現象を数式を与えて説明するとともに光の直進性も説明ができ、パリの科学アカデミーの懸賞問題に応募し受賞した。このことで、光の波動説が有力になった。これらはホイヘンスーフレネルの原理と呼ばれ、後進波などの問題についても説明ができた。また、光が空気から水に入るときに屈折する理由として、波動説での説明では水の中の方が空気中より光の速さが遅くなるからであり、粒子説ではその逆であった。そこで波動説での決定的実験として、フーコーの実験より水中の速度は空気中の速度の4分の3であることがわかり、光は波動であるということが判明した。

 次に「光の速さ」について、デカルトやガリレオの実験例を挙げながら、「光の速さとは有限なのか、それとも無限大なのか」というテーマについての歴史を紹介された。

 初めて光の速さを求めたのはレーマーであった。彼は、木星の衛星イオの食の周期が一定でないのは木星と地球の距離が変化するためであると説明し、それによって光の速さを求めた。このときレーマーが発表した光速の値は、秒速約20万kmであった。そしてレーマーによって光速有限説が決定した。

 次に、フーコーは実験室内での光の速さの測定に取り組み、歯車の代わりに回転鏡を用いて光速測定を行い、非常に誤差の小さい範囲で測定に成功した。

 続いて「光の正体は何か」というテーマでは、電気と磁気について説明があった。これは切っても切れない関係であり、ファラデーの研究からも電気から磁気ができるだけでなく、磁気からも電気ができることがわかった。

 マクスウェルは電気と磁気の方程式から波動方程式をつくり、電気・磁気の実験で測定した値を代入することで波としての速さが求められ、それが真空中の光の速さと一致することがわかった。このことで光は電磁波、電気と磁気の波であることがわかった。光は電気の波と磁気の波を描きながら進んでいるのである。これが光の正体である。
 次に「光から始まった現代物理学」で、特にアインシュタインの相対性理論について説明していただいた。光の速さが同じであるので「電車の中にいる人」の方が「電車の外にいる人」よりも時間がゆっくりと進んでいる。これが時間の相対性である。光速は不変である、どのような慣性系でも物理現象は同じであるという仮定で常識を覆すことが多くある。物体は運動方向に縮んで見える、運動している系は時間がゆっくり進む、速さの合成速を計算しても決して光速を超えることはできないなどである。このようにしてアインシュタインの特殊相対理論の「光速度不変の原理」や「特殊相対性原理」についての説明があった。さらに、質量はエネルギーであるということである。そして、特殊相対性理論の身近な例として、カーナビ等に利用されているGPS機能について説明していただいた。GPSに使用されている衛星速度は非常に速いため、正確な時間を測定するためには相対論的な効果を利用して計算している。

 最後には「光から始まった量子力学」として、プランクによる光のエネルギーの不連続性やエネルギー量子について説明いただき、アインシュタインによる光の粒子性と波動性についても教えていただいた。

 

生徒の感想から
  • 少し難しい内容もあったが、光や波について興味を持つようになった。
  • 物理に対する興味・関心が沸いた。
  • 科学者の研究内容の歴史的な経緯がよくわかっておもしろかった。
  • 今後もこのような機会を増やして欲しい。
  • 将来、宇宙や光についての研究をしていきたい。
  • 特殊相対性理論や量子力学に強い関心を持ったので、今後物理学を学びたい。

 などの感想が多く、講演のもつ意味を確信できる講演であった。また、進路選択に対する考えも深まっている生徒もいて、生徒にとっては大変面白く、意義深いお話で、熱心に最後まで聞いていた。

 

  

 

第2回講演 「協調社会の進化ー社会生物学入門ー」

京都大学大学院 農学研究科 地球環境科学専攻 大槻 初音 先生

  はじめに先生の学生生活の話と現在の研究対象の生物の話を紹介していただいた。

 そして、社会生物学を身近に感じてほしい、理性ある大人になってほしいというメッセージを込めているという前置きの後、本題の「協調社会の進化ー社会生物学入門ー」の講義に移った。

1.進化って何?

集団内で遺伝子頻度が変わることが進化。賢い行動とは、得られる利益が損失を上回る行動。自己の生存を高める。損得勘定は本能的に備わっている。利己的である。

2.利他行動の進化
血縁度で説明できる。例として、親による子の世話、不妊の働きアリ・ハチ。将来的な見返しが期待される場合に進化。利他的行動は姿を変えた利己的行動である。結果的に自己の遺伝子を多く残すような性質が利己的。

3.個vs.集団
協調社会を維持するしくみ。社会における異端者、内乱、刑罰の存在、宗教弾圧などを説明。過度な平等化は差別につながる。人間社会の現象を理解する助けとなる。

 

生徒の感想から
  • 少し難しい内容の説明の時に身近な例などをくわしくあげてくださったおかげで、とてもわかりやすかったです。また、最後に、社会生物学についてくわしく書かれた本を紹介してくださったので、今度よんでみようと思いましたし、より興味を持つことができました。
  • かびたパンだったり、子供への虐待であったり、いろいろな行動パターンに具体例があったので、すごくわかりやすかったです。
  • 事前に、(高校で)生物を習っていないことを知ってくださっていて、それでも分かりやすい説明だったので良かったです。
  • このような機会がなければ協調社会について学ぶことはなかったかもしれないです。説明はしにくいけれども大きな衝撃を受けました。
  • 今回の講演をとおして、自分の無意識にしている行動を改めて考え直すことができ、また科学に対しても考え方を変えることができました。もっと調べてみたいと思いました。
  • 話の内容が幅広く展開していったところがとてもおもしろかったです。理系分野だけでなく、社会的な内容にもなったので少し難しかったですが、興味が湧きました。
  • この利害と集団の利害のところの、利己的個体と利他的個体が一緒にいるとどうなるのかという話には、とても納得しました。協調社会を維持するという話が、とてもおもしろかったです。
  • 先生は何度も、私たちに反感かうことを心配していましたが、むしろ、人間=動物の考え方は興味深くて、社会生物学っておもしろいと思いました。
  • 初めて知った学問で、とても興味を持ちました。とても面白かったです。大学の様子なども丁寧に教えてくださったので、とてもためになりました。ありがとうございました。
  • 文系だけれども、このような生態学にもとても興味がもてた。