平成27年度 SSP講演会(4)

第7回講演 「現代の錬金術:人工的にパラジウムは作れるか?」

京都大学大学院 理学研究科 教授 北川 宏 先生

 北川先生の研究室では、「卑金属から貴金属をつくる」ということをテーマとして、安価で手に入りやすい金属から、高価で希少な金属を作り出すことをテーマとしています。これは日本は資源の少ない国であるし、国が発展するには今後も科学力によって牽引するためには、産業をとして役立つものを研究開発する必要性があるからです。

 先生が以前、白金とパラジウムを混ぜた合金を作る研究をしているときには、水素を吸蔵させることによってパラジウムの結晶格子が大きくなり、吸蔵された水素原子が金属結合をすることによって、水素・白金・パラジウムの3つが合わさった合金が生じ、普通ならば混ざらないものを混ぜることに成功したのだそうです。

 また、安価なルテニウムとパラジウムを混ぜて、自動車の排ガスを浄化する触媒である高価なロジウムの性質を持った合金の製作にも成功され、中国で作っている触媒を搭載しない自動車にも装着できる排ガス浄化触媒を開発されたということでした。 

 また、今後は銀とスズを混ぜてカドミウムやインジウムの性質を持った合金を作ったり、モリブデンとルテニウムを混ぜてテクネチウムの性質を持った合金を作ったりと、さまざまな組み合わせで希少金属と同じ性質を持った合金を作り出すことを目標とされています。

 奈高生に向けて、勉強と研究はまったく違うことや、人生で良い先生と巡り会った経験が人生に大きな影響を及ぼすのだというメッセージをいただきました。

  

  

第8回講演 「ロボットと未来社会」

大阪大学大学院 基礎工学研究科 特別教授 ATR石黒浩特別研究室室長(ATRフェロー)石黒 浩 先生

 石黒先生は、大阪大学でアンドロイド等の研究をしておられる方で、ロボットサッカーの世界大会で4連覇を達成するなどの業績を挙げておられます。また、マツコ・デラックスさんそっくりのマツコロイドや、桂米朝さんそっくりの米朝アンドロイド、そしてご自分にそっくりのアンドロイド「ジェミノイド」を作った方として、テレビにもしょっちゅう取り上げられている方です。

 2010年公開の映画「サロゲート」の冒頭シーンで「ジェミノイド」が取り上げられ、この映画についても石黒先生は、「決して荒唐無稽なSFではない」と、コメントされています。

 会場となった視聴覚室は、普段よりも増席し100人近くが講演を聴くことになりました。

 石黒先生の研究の発端は、先生が幼い頃、「人の気持ちを考えなさい」といわれたことにあり、自分は何もわかっていないことに気付き、大人になるとはどういうことなのか、人の命の価値さえもわからない、という疑問を持つようになことだそうです。

 現在、交通事故で毎日何人もの人が亡くなっており、東北大震災でも数多くの人が亡くなっている。そんな中で人の命に絶対の価値はないのではないか、人の本当の価値を探すことが人生であり、自分探しであり、それを通した人間理解がロボット製作に役立つと考えておられるそうです。

 そう遠くない将来、ロボット社会が到来するであろうということをさまざまな例を踏まえて話されました。高齢者介護・病院や公共施設の受付や会計・デパートや小売店の接客・テレビ通販番組の出演・駅交通機関での運行や案内や発券・学習や教育機関等、今人間が行っている業務の大部分がロボットに取って代わられ、人間はロボットにできない業務をするようになるそうです。

 実際にあるデパートで紳士服の販売を人間の売り子さんとロボットの売り子さんで比較したとき、トップセールスの売り子さんが80万円売るところをロボットの売り子さんが60万円を売ったそうです。また、マツコロイドやジェミノイドのような喋れるロボットなら、本人が講演会に出向かなくても、アンドロイドを送って遠隔で操作すれば、まるで本人が喋っているかのように講演会もできるそうです。

 社会には、どんどんロボットやアンドロイドが現れてきており、それらに人間型が多いのは、人は人を認識する脳を持っており、最も関わりやすいインターフェースが人だからだそうです。 今後のロボット社会の実現として、実世界で人と関わる自律型アンドロイドの開発を目指しています。「心が通うロボット」の開発として、意図や欲求を持つロボットの研究を行い、意図を共有することが「愛」なのではないかと考えて、「心が通うロボット」の研究を進めていくそうです。