平成28年度 SSP講演会(2)

第3回講演 「お薬のデザイン(医薬品設計とは)」

近畿大学薬学部創薬科学科 教授 仲西 功 先生

 まず最初に、「医薬品」の定義を法律における表現を用いて紹介され、「デザイン」という言葉についても、「作ろうとするものの形態について、機能や生産工程などを考えて構想すること。建築、工業製品、服飾、商業、美術などの分野で実用面などを考慮して造形作品を意匠すること。」だと説明された。

 次に、市販されている「絆創膏」、「風邪薬」、「胃腸薬」、「栄養ドリンク」を例に、どれが医薬品か、医薬部外品かという話をされて、本題に入り、次のようにお話していただいた。

 

  • 薬のデザインとは → 薬の分子の形(原子のつながり)や分子の性質(原子の種類)を考えることである。
  • 薬はなぜ効くのか → タンパク質(酵素や受容体)の正常でない働き(病気の原因)を調整する。
  • 病気の治療には → 酵素の数が異常に増えているときには、酵素の働きを抑えてやればよい。基質の代わりに酵素にくっつくものを考えてあげるとよい。酵素で分解されないほうがよく、酵素により強くくっつくものがよい。
  • 薬の働き(酵素の場合) → 薬は酵素に強くくっつくが切れない分子である。異常に増えた酵素の働きを薬でブロックするとよい。
  • 薬をデザインする → タンパク質にくっつくものを考える。

 

 以上を元に、インフルエンザ治療薬である「タミフル」を例に、具体的なデザインの様子を紹介していただいた。

 後半では、薬の「種」を見つけるのに、1台のパソコンで1年かかるが、スーパーコンピュータ「京」なら数時間ですむが、薬というのは効き目があっても副作用があればだめであり、特に内服薬には体内での吸収・分布・代謝・排泄、溶解性、安定性が求められるという大きな障壁があり、1つの薬ができるのに9~17年、2千億円という時間と費用がかかり、完成する確率は3万分の1(ゴルフのホールインワンや三毛猫のオスの誕生と同じ)である。

 多くの研究者が知恵を出し合ってデザインするのだから、有名なデザイナーはいないということも述べられた。

 薬作りは、病気で苦しむ患者さんを助けることができるやりがいのある研究であり、強い情熱が必要であり、多くの若者が薬作りに興味をもち、薬学を学んでくれることを期待していることなどをお話していただいた。

 その他にも薬学部で実際に学ぶ内容についてや、4年制(製薬研究者の育成)と6年制(薬剤師を育成)の違いについても説明され、現在高校で学んでいる化学・生物・物理などの基礎をしっかり学んでおくことの重要性についてもお話していただいた。

生徒の感想から
  • 講演中の生徒の表情やアンケートの結果から、今年も好評であったと判断できた。
  • 理系学部、特に薬学部への進学を考えている生徒にとって、大学での研究内容であるとか、進学にあたって勉強しておかねばならないことも説明していただき、生徒の進路選択にとって非常に有益であったと思われる。
  • 講演会には文系志望の生徒や文系教科の教員も参加していたが、わかりやすい内容で薬学が身近に感じられたという感想が得られた。
  • 普段の聞くことのできない高度な内容の話を聞く機会を持ち、知的好奇心が刺激され、もっと深い内容も知りたいと思うようになったという回答が多くあった。

 

  

 

第4回講演 「アナログ計算機を作ろう」

大阪大学大学院 理学研究科  助教 小川 裕之 先生

 「今日は、面倒な四則計算を道具にやらせよう。」というお話です。やる気が出なくてもたくさん計算しなければならない場面に出会うことがあります。少しでも楽に計算する方法を考えてみましょう。そのために定規を使って加減算アナログ計算機を作ってみましょう。

 実数aとbについて、和a+bを作図します。和a+bに対応する実数を図形的に表すことを目標とします。直線l上にOから見た符号付き長さがaの点Aと、Oから見た符号付き長さがbの点Bをとります。

 始点をOからAにずらして、Aから見た符号付き長さがbの点Cをl上にとると、点CのOから見た符号付き長さは、a+bに等しい。

 起点Oをはさんで正の数と負の数が、数の大きさの距離のところに目盛りを刻んだ普通の定規を2つ用意します。上の定規の目盛りaに下の定規の起点Oを合わせると、下の定規の目盛りbに重なる上の定規の目盛りがa+bになります。原理的には正確ですが、長さというアナログ量に置き換えたために測定誤差が生じます。この意味でアナログ計算機と呼ばれます。