平成28年度 SSP講演会(3)

第5回講演 「大学(医学部)入学はスタートライン -イケてる人材(医師)に求められる資質とは?-」

大阪市立大学医学部附属病院 総合診療センター

大阪市立大学大学院 医学研究科 総合医学教育学 教授 首藤 太一 先生

 

 今回の講演では、医者としてどういう人材が求められるかを示すために、会場で模擬面談を行ったり、生徒に手の挙げ方や“うなずき”の仕方を教えていただいたりして、コミュニケーションの基本としての共感的態度の重要性を訴えられた。

 また、大阪市立大学医学部の学生に実施する講義内容を紹介していただいた。その内容は、医者は1年目からプロフェッショナルとしての自覚が必要であり、マニュアルにない対応力を要求されること、知識だけでなく技術や技能を学ぶ時には、周囲は気にせず常に指導教官から学ぶ姿勢が必要であること等、厳しい内容のものが多かった。

 また、先生が外科医のときの最も印象に残っている手術の例から教えられた医師としての自覚や、大学病院勤務外科医の当時の実情についてお話していただいた。

 さらに、そこから感謝の気持ちを忘れず、今度は少しでも還元していくことが必要だと教えていただいた。

 次にアメリカの医療機関での研修から日米の医学部の相違点について触れながら、現代の医学生や若い医師の課題を挙げられた。

 そして、大事なのは人間力であり、つまりはコミュニケーション力である。最近の日本の若い医師の中にもその力に欠けている者が多いと嘆かれていた。

 最後に、良き医療人になるためには「正しい答え」のない問題を、これからは考え続けなくてはいけないという覚悟が必要であることを教えていただいた。

 

生徒の感想から

 講演中、生徒は非常に関心を持って聞いている様子がうかがえた。さらに、講演後も詳しく話が聴きたいという生徒に、時間を延長して医療現場での話や先生の学生時代の話などをしていただき、生徒たちも熱心に話を聞いていた。

 生徒から、以下のような感想が非常に多く寄せられた。

  • 医学に対して大切なことを教えていただき大変感動した
  • 医療に携わる仕事の大変さや意味を理解できた。

 

 


 

  

第6回講演 「現代の錬金術 人工的にパラジウムは作れるか?」

京都大学大学院 理学研究科 教授 北川 宏 先生

 どう工夫しても均一に混ざらない水と油の関係にある金属元素どうしを、原子レベルで混ぜ新しい物質を作り出す「元素間融合」について、原子間の結合の基本的な話から発見の経緯、そして今後の展望に至るまで、わかりやすい例や図を用いながら説明をしていただいた。

 白金属の元素は希少な金属であり、かつ触媒など利用価値の多い金属である。たとえばパラジウム(Pd)は、水素をよく吸蔵する金属として知られている。それに対して、白金(Pt)は水素を吸収しない。この2つの金属(パラジウムと白金)は、どう工夫しても均一に混ざらない金属である。しかし、パラジウムを白金の層で覆い、水素を何度か出し入れしているうちにパラジウムと白金が原子レベルで混じり合い、さらに、パラジウムより多くの水素を吸蔵する構造に変化していることがわかった。

 複数の元素を原子レベルで混ぜ合わせることで、元の元素にはない優れた特性をもつ革新的な物質が得られるのではないか。これが、「元素間融合」の考え方である。

 その後、「周期表で同じ段(周期)にひとつおいて並ぶ2種類の元素を混ぜてやれば、2つの真ん中の元素の性質を持つようになるのではないか。」と考え、ロジウムと銀を融合させパラジウムを作ることに取り組んだ。しかし、ロジウムはパラジウムの何倍も高価なため、割に合わない。そこで今度はルテニウム(Ru)とパラジウムからロジウム(Rh)を作ることを目指した。

 このように「元素間融合」という  新しい合成手法を用いると、今まで夢でしかなかった全く新しい物質・材料を作り出すことができる。

 

生徒たちへのメッセージ

 奈高生に向けて、勉強と研究はまったく別物であるということや、人生で良い先生と巡り会った経験が人生に大きな影響を及ぼすのだ、というお話をされた。

 また、先生の高校時代の化学の成績や研究のお話から、常識に囚われず、諦めずに突き進んでほしいとメッセージをいただいた。