平成29年度 SSP講演会(1)

はじめに

 科学に対して生徒たちがもつイメージはニュースなどで耳にしたことのある分野について「おもしろそうだな」と漠然と思っている程度で、具体性に欠けるきらいがあります。

 そこで、SSP講演会では、自然科学およびその関連分野について造詣の深い講師を大学や研究機関等からお招きし、最先端の内容を具体的にお話いただくことによって、生徒の興味・関心を深める意図をもって実施されます。

 また、今、自分が身につけるべきスキルについて生徒に再認識させ、自らのキャリアデザインを行う動機付けとさせる意図ももって行われるプログラムの一つです。

 

講演会の概要

  

実施日

講  師

テ ー マ

第1回 11月16日(木)

東住吉森本病院

坂上 祐司 先生

医師ってどんな仕事をしてるの?
第2回 10月3日(火)

京都大学

北川 宏 先生

元素と元素を混ぜて新しい元素を作る
第3回 10月3日(火)

国際協力機構JICA

山本 康夫 先生

国際的なものの見方・考え方
第4回 10月24日(火)

京都大学

風間 春奈 先生

昆虫たちの闘いー寄生者から身を守るー
第5回 11月6日(月)

大阪大学

小川 裕之 先生

方程式を図で解くはなし
第6回 11月9日(木)

九州大学

坂上 貴洋 先生

振り子から見る現代物理:カオスと同期現象
第7回 11月10日(金)

近畿大学

仲西 功 先生

AI(人工知能)でお菓子を創ることはできるか?
第8回 11月17日(金)

脚本家

今井 雅子 先生

石ころを宝石に

 

第1回講演 「医師ってどんな仕事をしてるの?」

東住吉森本病院 循環器内科部長 地域医療連携センター長 坂上 祐司 先生

講演要旨

 今回のSSP講演会の講師である、医療の現場で医師として活躍されている坂上 祐司 先生に、先生ご自身のここまでの道のりや現場の医師としての仕事の実際をお話し頂きました。

 まず、自己紹介として、先生ご自身は北海道出身であることや家族構成などをお話し頂きました。そして、医師への志望動機としては、先生の祖父が大腸がんになり人工肛門を付けることになったとき、祖父の不自由でつらそうな様子やそれを介護する祖母の様子をみて、自分もがんで苦しむ人を医師として助けたいと思ったことがきっかけであったそうです。

 次に進路選択の道のりとして、公立の小・中学校に進み、高校では自宅に近い高校へ進学し軟式テニス部の活動に熱心に取り組んでおられました。高校3年生から医学部を目指し、受験勉強を始められましたが、勉強不足であったことから、大学進学まではかなり苦労をされましたが、あきらめずに挑戦をされたお話をして頂きました。そこでの教訓は、「わからないところを攻めて、わかるようにすれば成績は必ず伸びる」ということでした。そして見事、北海道大学医学部に合格され、大学ではスキー部でアルペンスキーに熱心時取り組んでおられました。

 その後、次の大事な関門である医師国家試験を合格し、いよいよ医師としての道を歩み始められました。ここでの大きな進路選択として、先生は天理よろず相談所病院で、全国にさきがけて総合診療方式によるジュニアレジデントという研修制度を受けることを選択され、その後シニアレジデント研修として内科ローテーションコースで3年間多くの研修を積んでこられました。そして、大阪市立大学附属病院や大阪市立総合医療センターでの勤務、そしてスタンフォード大学での研修を行われ、2007年より現在の病院に勤務されているということです。

 次に、医師の仕事として、臨床医(勤務医や開業医等)、基礎研究医(遺伝子治療や再生医療等)、その他(官僚や製薬会社等)に分けられることをわかりやすく教えていただきました。

 また、最近の医療事情についても、厚生労働省からの資料を基に、医療を取り巻く環境として「高齢化」の現状と将来の統計を解説頂きました。さらにそれを受けて、文部科学省が地域包括ケアシステムにおける医師の役割や多様なニーズに対応できる医師の養成を目指していることなども教えて頂き、日本の医療の現状についても詳しく解説頂きました。
 また、現在の循環器医療について、その症状やカテーテルでの治療方法なども動画も交えながら教えていただきました。
 そして、最後に坂上祐司先生ご自身の考える医師としての大事な資質として、1.強い使命感、2.親切心・いたわる心・ボランティア精神、3.体力・気力、4.人としての器を大きく磨く・教養を磨く、5.あきらめずに学力を磨く、6.問題解決能力を挙げて頂き、この「問題解決能力」が一番大事であると教えて頂きました。そして、医師としてのやりがいは患者さんが良くなったときの笑顔や感謝の言葉、より良い治療法が見つかったときなどを挙げられました。

 また、日本の女性医師の増加が望まれることやご家庭への感謝の気持ちなどもお話頂き、ご講演を終えられました。

 講演後の生徒からの質問では、大学から病院へ勤務する際の選び方や、英語力の必要性、またチーム医療についての質問が発せられ、坂上先生はその一つ一つに丁寧にお答えいただき、生徒の様子からも大変有意義な講演会であったことが分かりました。

 

 

  

 

第2回講演 「元素と元素を混ぜて新しい元素を作る」

京都大学大学院理学研究科 教授 北川 宏 先生

 今年度も金属元素どうしを原子レベルで混ぜて新しい物質を作り出す、「元素間融合」についのてのお話をされた。

 まず、周期表の周期と電子軌道の関係、化学結合の基本的な話など1年生の1学期で学習した内容をより深く、わかりやすい例や図を用いながらお話をされ、先生の研究についてと話は進んでいった。そして、今後の研究の実現の可能性についても説明をしていただいた。その内容は以下のようなものである。

 白金属の元素は希少な金属であり、かつ触媒など利用価値の多い金属である。たとえばパラジウム(Pd)は、水素をよく吸蔵する金属として知られている。それに対して白金(Pt)は水素を吸収しない。この2つの金属(パラジウムと白金)はどう工夫しても均一に混ざらない金属である。

 しかし、パラジウムを白金の層で覆い水素を何度か出し入れしているうちに、パラジウムと白金が原子レベルで混じり合いパラジウムより多くの水素を吸蔵する構造に変化していることがわかった。複数の元素を原子レベルで混ぜ合わせることで、元の原子にはない優れた特性をもつ革新的な物質が得られるのではないか。これが、元素間融合の考え方である。

 その後、「周期表で同じ段(周期)上に並ぶ原子番号順で一つおきの二種類の元素どうし混ぜてやると、二種類の元素に挟まれた真ん中の元素の性質を持つようになるのではないか。」と考え、ロジウム(Rh)と銀(Ag)を混ぜ合わせパラジウム(Pd)の性質を持つ合金を作ることに取り組んだ。しかし、ロジウム(Rh)はパラジウム(Pd)より何倍も高価なため割に合わない。そこで今度は、ルテニウム(Ru)とパラジウム(Pd)を混ぜ合わせ、ロジウム(Rh)の性質を持つ合金を作ることを目指した。

 このように元素間融合という新しい合成手法を用いると、今まで夢でしかなかった全く新しい物質・材料を作る出すことができる。

 

生徒の感想から

 奈高生に向けて、「教科書を信じすぎないこと。」と言われたとたん生徒達からどよめきがおきた。しかし、教科書を疑うためには、まず教科書を勉強しなければらないことをちゃんと分かっている生徒集団だからこそ、そのような大胆なお話をされたのだろう。

 また、先生の高校時代の化学の成績や研究のお話から、常識にとらわれず諦めず突き進んでほしいとメッセージをいただいた。