平成29年度 SSP講演会(2)

第3回講演 「鑑(かがみ)としての世界-外へ向かう旅と内へ向かう旅」

独立行政法人 国際協力機構(JICA) 国際協力推進委員  山本 康夫 先生

 日本は1954年にコロンボプランに加盟して以来、国際社会の平和と発展に貢献するために政府開発援助(ODA)として、開発途上国に対して資金的・技術的な協力をしてきました。JICAが行うのは、ODAのうち、世界150カ国以上の国と地域に対する技術協力・有償資金協力・無償資金協力などです。

 協力活動としては、開発途上国の教育支援・難民貧困救済・保健医療支援・インフラ整備・気候変動対策等が挙げられます。

 講師の山本先生は、2014年7月から2016年11月まで、ケニアで青少年活動という職種で活動されていました。

 講演ではJICAの概要を、同じ推進委員をされている内田先生から説明を頂き、その後、ケニアでの活動について山本先生からお話しいただきました。

 山本先生はケニアについてのクイズを出題して、環境や地理、言語や文化について概要を述べられました。

 その後、山本先生のリマンドホーム(少年一時拘置所)での活動内容について伺いました。そこでの子供たちの抱えている問題は、子供たちをとりまく問題とも大きく関わっており、それに対してどんなことができるのかを考えながらの活動であったようです。

 そして「『豊かな社会』にとって大切なこと」について資料を見せながら、生徒同士でも話し合いを行いました。その話し合いから立場や背景の違いを理解することで、より良い社会に近づけること。また、多くの事例を示しながら、価値観の違いを知ったり、心の持ち方を変えたりしていくことで人との関わり方も変わっていくこと。について述べられました。

 講演後、生徒たちからは「ケニアの人たちに必要なことは何か?」や「海外協力隊に参加したきっかけは?」、「もう一度ケニアに行ったら今度はどんなことをしたいか?」など活発に質問が出たことは、生徒たちの国際的な視野と興味・関心が深まった有意義な講演会でした。

 

               

 

 

第4回講演 「昆虫たちの闘い-寄生者から身を守る-」

京都大学大学院農学研究科 風間 春奈 先生

講演要旨

 まず、先生ご自身の自己紹介をしていただいた。寄生ダニの忌避物質の研究を行い、大学から企業へ就職し、製品開発に携わった。講演を聴いている生徒には、先生が開発に携わった製品を家で利用している者もいた。先生自身、虫好きでありながら、企業で防虫や殺虫の製品を開発していることに疑問をもち、虫の研究のために、大学での研究へ戻ったという。現在は、イネのアレロパシー、リンゴを食べるガの防御について研究を続けている。

 ある適応とそれに対する対抗適応が競うように発達する[ようにみえる]共進化のプロセスの一種を進化的軍拡競争という。キャベツとそれを食べるモンシロチョウはその例である。モンシロチョウがキャベツを食べる⇒キャベツは食べられないように防御物質をつくる⇒モンシロチョウは防御物質(毒)を克服し、また食べる⇒・・・・・・この繰り返しによって、互いに進化してきた。このことは、小説「鏡の国のアリス」(ルイス・キャロス)の登場人物「赤の女王」の台詞である「その場にとどまるためには、全力で走り続けなければならない(It takes all the running you can do, to keep in the same place.)」にたとえて、赤の女王仮説と名付けられたという。名付けたのは、進化生物学者のリー・ヴァン・ヴェーレン(Leigh M. Van Valen、1935~2010年)である。生存競争に生き残るには常に走り(進化し)続けなければならいというわけである。

 次にミツバチと、ミツバチに寄生するダニの関係について述べられた。農学分野では、蜂蜜を採取するのに、農薬や殺虫剤を無尽に使うことはできない。近年は、化学農薬・殺虫剤に頼りすぎた過去の反省から、IPMという考え方が広まってきているという。IPMとは、周辺環境と対応種の個体群動態を考慮しつつ、生物/化学/耕種/物理的防御を上手に組み合わせて病害虫の密度を経済許容レベル以下に抑えようとするものである。この考え方に基づき、先生たちの研究戦略は、化学薬品に頼らず、ハチ由来の物質で、ハチに甚大な被害が出ない程度に、ダニを低密度に抑える。というものである。ここで、初めの例にもどり、キャベツのモンシロチョウに対する防衛戦略について、さらに詳しく述べられた。

 最後に、大学の研究生活の様子を楽しく語っていただいた。

 

生徒の感想から

 講演中、生徒は非常に関心を持って聞いていた。

 講演の最後のほうに、先生が言われた「理科は答えがあるもの」「科学は答えがないもの」という言葉がとても印象に残った。

 昆虫に関する質問や研究生活に関する質問があり、先生は丁寧に応えておられた。

 アンケート結果も高評価で、大変有意義な講演であった。